第6回日本ヘルスサポート学会学術集会・総会が、以下のとおり開催されました。
I. 開催趣旨
これまでのヘルスサポートに関するアプローチは、個々の対象者に対してどのように介入して状態を改善するかとの医療関係のアプローチや制度をどのように改革するかとの政策指向のアプローチなどが多かった。
今回の学術集会では、最近注目を集めている健康経営に着目し、会社等の組織の活力ひいては社会の活力を高めるために総合的な経営の視点からこれからのヘルスサポートのあり方を探るアプローチとした。
II. 学術集会・総会プログラム
●メインテーマ 健康経営とこれからのヘルスサポート
●日程 2011年12月1日(木)午前10時から午後5時45分
●会場 慶應義塾大学三田キャンパス 北館ホール
●大会長 目黒 昭一郎(麗澤大学大学院国際経済研究科、日本ヘルスサポート学会理事)
●実行委員長 小林 篤(損保ジャパン総合研究所)
実行委員 Gregg Mayer(日本ヘルスサポート学会理事)
実行委員 武林 亨(慶應義塾大学医学部)
実行委員 林田賢史(産業医科大学医療情報部)
1 大会長講演・米国の状況
・「健康経営とヘルスサポート」目黒 昭一郎(麗澤大学大学院国際経済研究科教授)
・“Working Towards Wellness: Linking Population Health and Business Performance in US Companies”, Gregg L. Mayer, PhD
2 ポスター発表
3 総 会
4 シンポジウム・討議
経営者からの事例発表・日本の状況報告と研究者・経営者等の討論
座 長 松田 晋哉(産業医科大学公衆衛生学教室教授)
特別講演 藤重 貞慶(ライオン株式会社代表取締役社長)
事例報告 藤原 敏正(大阪ガス株式会社理事人事部長)
日本の状況報告 永田 智久(産業医科大学産業実務研修センター助教)
討議
森山 美知子(広島大学広島大学大学院保健学研究科教授)
武林 亨 (慶應義塾大学医学部公衆衛生教室教授)
小松 正樹 (清水建設常務執行役員)
佐藤 好美 (産経新聞編集委員)
5 表彰式 ベストポスター賞・学会賞(実践活動部門賞)
6 学会賞受賞者報告
7 総括・閉会挨拶
田中 滋(慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授、日本ヘルスサポート学会理事長)
III. 講演・報告・シンポジウム討議の概要
大会長講演において、わが国における健康経営に関する研究活動・啓蒙活動、健康経営に対するアプローチおよび今後の健康経営とヘルスサポートの課題につい て論点の提示があった後、米国の状況について報告があった。米国の企業において、単に医療費のみに着目するのではなく、会社の生産性向上を目指した取組み があることが示された。米国においても、短期の医療費削減目標に左右されず、より上位の目標を定め成果を上げることが進められていることが紹介された。そ の後、具体的な日本の企業の取組みについて、経営トップ、経営陣から経営理念に基づいて従業員が健康で快適な会社つくりを目指す組織的な活動や会社として 長期に亘る組織的な健康づくり活動などの特別講演・報告ががなされた。さらに、 これらの特別講演・報告等に基づき討議が行われた。学術集会を通して、健 康経営の進展状況および今後の課題が明確化されることになった。
ベストポスター賞受賞者はこちら 第4回学会賞表彰式の模様はこちら
1.大会長講演(基調報告)および米国の最新状況報告大会長講演「健康経営とヘルスサポート」
目黒昭一郎(麗澤大学大学院国際経済研究科)
米国の最新状況報告「Working Towards Wellness: Linking Population Health And Business Performance In US Companies」
Gregg L. Mayer, PhD
講演資料(PDFファイル)
2.シンポジウム「経営者からの事例報告・日本の状況報告と研究者・経営者等の討論」
特別講演 藤重 貞慶(ライオン株式会社代表取締役社長)
事例報告 藤原 敏正(大阪ガス株式会社理事人事部長)
大阪ガスグループにおける健康づくりへの取り組み(PDFファイル)
日本の状況報告 永田 智久(産業医科大学産業実務研修センター)
日本ヘルスサポート学会シンポジウム状況報告(PDFファイル)
3.討議パネリスト
森山 美知子(広島大学広島大学大学院保健学研究科教授)
武林 亨(慶應義塾大学医学部公衆衛生教室教授)
小松 正樹 (清水建設常務執行役員)
佐藤 好美 (産経新聞編集委員)
4.総括田中滋(慶應義塾大学大学院経営管理研究科)
受賞者(所属) | 演題 | 発表内容要約 |
中川 徹 (株式会社日立製作所 日立健康管理センター) |
インターネットを介した減量支援プログラムの実施状況 | インターネットを介した減量支援プログラム実施6ヵ月後の健診結果について報告した。終了者平均減量4.7 kg(6.0 %減)、特定健診検査項目はすべて有意に改善をみとめ、減量支援プログラムの有効性が示された。 |
前田 一寿 (株式会社ロブ) |
勤労者の過重労働等による睡眠時間不足の影響の可視化に関する一考察 | 労働時間の超過に伴う睡眠不足は、脳疾患、心疾患発症リスクの増大につながり、「うつ」との関連性も大きい。勤労者の睡眠時間の不足による影響を経済学 的、経営学的なアプローチで、仮説構築による可視化、データ結果に基づく可視化を行なった。これらで健康被害、企業収益への甚大な影響を示すことが、管理 職社員への過重労働対策、生活習慣管理、勤怠管理に関する事業者の認識に大きな効果を与えると考えられた。 |
石川 清子 (株式会社損保ジャパン・ヘルスケアサービス ヘルスケア研究所、株式会社損害保険ジャパン) |
WLQ-J を用いた看護職の「仕事の要求度-コントロールモデル」の検証 | 業務生産性測定プログラム「mimoza WLQ-J」を用いて「仕事の要求度-コントロールモデル」(量が多く、裁量権の少ない仕事は有害とするモデル)を検証した。労働生産性低下率は低ストレ イン群(5.7%)、アクティブ群(8.3%)、高ストレイン群(10.2%)の順だった。さらに、同じ群でも、社会的支援が高い場合、生産性低下の緩和 が確認された。以上の結果から、職場における上司・同僚の支援はメンタルヘルス対策だけではなく業務生産性の改善にも有効であることが示唆された。 |
(左から)中川徹氏(株式会社日立製作所日立健康管理センタ)、前田一寿氏(株式会社ロブ)、石川清子氏(株式会社損保ジャパン)、目黒大会長(麗澤大学大学院国際経済研究科