アジア太平洋ヘルスサポート学会
理事長 田中滋
アジア太平洋ヘルスサポート学会は、ディジーズ・マネジメントおよび健康支援に関する方法とその成果の分析や、この事業がよってたつ共通基盤の整備(代表的には品質を測る標準的な指標の開発など)をめぐる研究と報告・討議の場です。
ここで「ヘルスサポート」という名称について説明しておきましょう。この名称を採用した主な理由としては、ディジーズ・マネジメントの直訳である「疾病管理」の響きがきついことがあげられます。前半分を「疾病」と捉えると、医師など医療職のみが担当する仕事との誤解が生まれかねません。また、有病者の重症化をふせぐ「ケースマネジメント」的ニュアンスが強くなります。ケースマネジメントはもちろん研究フィールドですが、われわれは、有病者ではないものの現状の検査データが気になるいわゆる「予備軍」の方、さらには健康な方をも対象とする行動をも扱おうと考えています。他方、後半を「管理」と表わすと…健康指導の「指導」もそうですが…対象者の自発性を尊ぶことが難しくなるのではないでしょうか。そこでわれわれは、介護保険の理念である「自立支援」を参考に、「ヘルスサポート」と名乗った次第です。
この学会で繰り広げられる研究と報告で用いられる学問の方法論は、医学・公衆衛生学・保健学・栄養学・ヘルスサービスリサーチ(狭義のヘルスエコノミクス=保健経済学と薬剤経済学)等にかぎられません。対象者が健康行動への興味をもち、行動変容を起こし、改善した行動を保つための技法に資する心理学・マーケティングなども重要です。介入をたやすくするため、また測定の精度と速度をあげるための機器開発の基礎にある理工学・通信科学等も関係します。事業のあり方を検討する経営学系統の学問と、社会資源の配分を考える経済学からのアプローチも求められるでしょう。ヘルスサポートにかかわる厚生労働行政の進展を評価する政治学分野も役立つはずです。このように多彩な分野にわたると共に、学際的な協同作業を想定しています。
本学会の目標は、研究の進展とその成果の世の中への積極的発表を通じ、ヘルスサポート・サービスの発展に積極的に貢献することです。大学やシンクタンクに属する研究者はもちろん、医師・保健師 ・看護師・栄養士をはじめとする実際の担当者、検診を含むヘルスサポート事業を行う営利・非営利の事業者、それら事業を支援する先端技術の開発企業、保険者(社保・国保・介護保険)、生命保険会社と損害保険会社、そして政策関係者など幅広い分野からの参加と発言を期待しております。
2006年6月
日本およびアジア太平洋地域における研究者および実践者の研究成果および実践成果を交換・共有する機会ならびにヘルスサポートに関係する研究および実践を志している者への教育の機会を提供し、内外の関係する学協会と連携することにより、日本およびアジア太平洋地域のヘルスサポートの研究および実践の発展に貢献することを目的とする。
※2019年9月5日現在 ※順不同、敬称略
田中滋 | 慶應義塾大学 名誉教授、埼玉県立大学理事長 |
---|---|
松田晋哉 | 産業医科大学 公衆衛生学教室 教授 |
平井愛山 | 千葉県病院局・循環器病センター元理事 |
保坂隆 | 保坂サイコオンコロジー・クリニック院長、聖路加国際大学 臨床教授 |
目黒昭一郎 | 麗澤大学大学院 経済社会総合研究センター 客員教授 |
森山美知子 | 広島大学大学院 医系科学研究科 成人看護開発学 教授 |
Gregg L. Mayer | Gregg L. Mayer & Company, Inc., President |
小林篤 | 社会福祉研究所主任研究員 |
武林亨 | 慶應義塾大学大学医学部 衛生学公衆衛生学教室 教授 |
金光宇 | 医療法人社団成和会理事長 |
中村秀一 | 医療介護福祉政策研究フォーラム理事長 |
小山樹 | 全国在宅リハビリテーションを考える会副理事長 |
半田一登 | 日本理学療法士協会会長 |
近藤太郎 | 近藤医院院長、元東京都医師会副会長 |
藤田善久 | 産業医科大学 産業生態科学研究所 教授 |
河野敏鑑 | 専修大学ネットワーク情報学部 准教授 |
野村恭子 | 秋田大学医学系研究科 公衆衛生学講座 教授 |
中村丁次 | 日本栄養士会代表理事会長、神奈川県立保健福祉大学学長 |
橋本廸生 | 横浜市立大学 名誉教授 |
---|---|
水田邦雄 | 全国土木建築国民健康保険組合理事長、元厚生労働省 事務次官 |